2019-12-22

2019年12月,東京世田谷,「名物裂と古渡り更紗」・「美意識のトランジション」展

  初冬というよりはすっかり冬の空。いろいろ片づけたいことや,掃除をしたい場所がたくさんある。まずはここに記録していなかったいくつかの展覧会を忘備録として。
  12月15日まで開催された「名物裂と古渡り更紗」展を静嘉堂文庫美術館で。空の色があまりにきれいで,何だか冷たくて,まさに「身を切る」よう。バス停から美術館入口までの短い上り坂にも短い溜息をついてしまう。

  静嘉堂では染織品の展覧会は初めてなのだそう。曜変天目を包む仕覆を見るだけでも足を運んでよかった。美しい更紗の生地を,いとおしむように少しずつ切り出しながら仕覆に仕立てるという行為のその気高さに心打たれる。

 五島美術館では12月8まで開催された「美意識のトランジション」展を。16世紀から17世紀にかけての東アジアの書画工芸が集められている。この時期をtransition「過渡期」として,盛んに交易が行われた東アジアの美意識を探る展覧会。書跡,漆芸,染織,陶磁,典籍のトランジションという5つのパートで構成されている。

 自分の好みにどんぴしゃだったこともあって,かなり興奮する。とりわけ漆芸のすばらしい品々! MOA美術館所蔵の朝鮮の螺鈿箱には,これを見ることができて,生きててよかった,とそんな想いが大げさでなくわいてくる。世の中には「絶対の美」というものが存在するのだ,それを信じて生きていくことが善なる生なのだ,と考えていた若い頃の自分に,ああ,やっぱりそうかもしれないね,と語りたくなってきた。そんな初冬の一日。

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