2020-05-10

読んだ本,「冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ」「ラダック ザンスカール スピティ」(山本高樹)

 
  いつかきっと,またインドへ行こう。行ってみたいエリアはいろいろあるのだけれど,ラダックという魅力的な場所の存在を知ったのは最近のこと。まずは地球の歩き方のビジュアルブックシリーズの1冊「ラダック ザンスカール スピティ」(ダイヤモンド社 2018)を注文してみたら,表紙に著者名が入っている。美しい写真が満載で,文章も読みやすい。というわけで,著者の山本高樹氏に大注目。ちょうどのタイミングで新刊が出ていた。一気に読了。遠い遠いところへ連れて行ってもらった。
 
 「冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ」(雷鳥社 2020)は冬になると峠道が雪で塞がり,行き来ができなくなるザンスカール地方へ,「氷の道=チャダル」を通って旅をした記録だ。ラダック地方へ流れ出るザンスカール川が凍結して氷の上を歩いて行き来できるようになるのだという。著者にとって2度目のチャダルの旅は,前回果たせなかったルンナクの最深部にある「プクタル・ゴンパ」の祭礼を取材すること。
 
 なるほど,旅の動機はそういうことか,と思いつつ,もはやそこに行かずにはいられない著者のsoulが頁の間から溢れ出てくるようだ。placeに魅入られた人の写真は魅力的で,文章はまっすぐに届く。
 
 「どう思う?こういう場所で過ごすミツェ(人生)のことを?」/「えっ?」/「こんな大変な場所に生まれて,人生を送ることに,意味はあると思うか?」(p.170)
 
  ホームステイ先の主人との会話と,その返答に迷う著者の内面がそのまま写真と文章で差し出される。読者である私もその問いに立ちどまり,途方に暮れる。
 
 しかし,この美しき魂を持つ旅人に,ザンスカールの人々はちゃんと答えを示してくれるのだ。ずっと一緒に旅をしたガイドのパドマが旅の最後に,仲間のザンスカール人と焚き火を囲んでぽつりともらす言葉に思わず息を呑み,涙腺がゆるんでしまう。
 
 新刊の購入特典で「夏の旅 ラダック、東の高地へ」という小冊子がついてきた。冬の旅はとても無理だけど,いつか夏のラダックへ行ってみよう。その日が来ることを信じて。 

0 件のコメント: