2020-10-24

2020年9月,北海道(5),ウポポイ 民族共生象徴空間

 ずいぶん以前のことだけれど,函館の北方資料館を訪れたことがあって,アイヌの手仕事やアイヌ絵には爾来惹かれてきたのです。なのでウポポイのオープンはとても楽しみでした。旅の最終日,札幌から白老へ。帰路はそのまま千歳空港へ向かう予定です。駅でコインロッカーに荷物を入れて,いざレッツゴー。

 施設に足を踏み入れると,美しい湖が目の前に広がります。広さは一日で回り切れないほどの規模ではありませんが,体験交流ホールや学習館,屋外ステージや工房など,プログラムがぎっしりなので,効率的に回らないと半日では時間が足りないかな,という感じです。

 アイヌの神カムイの視点を体験する映像「カムイ アイズ」や,伝統的な歌や踊り,楽器演奏の「シノッ」の上演などなど,整理券を求めて列に加わりながらプログラムを楽しんでいると,ちょっとテーマパーク的なワクワク感が。シノッでは鶴の舞「サルルンカムイ リムセ/サロルン リムセ」に感動。

 そして国立アイヌ民族博物館は久米設計による美しい建物です。1階はシアターとライブラリーやショップなど,2階に展示室が配置されています。常設展示は中心部に円形に代表的な資料を並べ,外周に詳細な展示を展開するというもの。テーマは「私たちのことば」「私たちの世界」「私たちのくらし」「私たちの歴史」「私たちのしごと」「私たちの交流」の6つ。すべてアイヌ語の表示が第一言語となっています。

 そうか,ここでは「私たち」=アイヌの人たちが主語なんだ。アイヌの人たちの美しい手仕事の展示を楽しもう,と呑気に訪れた私にはこの展示はかなり驚きの連続でした。アイヌが受けた苦難の歴史の展示では胸が苦しくなってきます。苦難の歴史は誰が行ってきたものかの視点がぼかされている,という評も耳にしますが,ここを訪れる人にとってはそれは自明のことであって,展示を見て人として深く考える場ではないのか,とそんなふうに感じたのでした。

 アイヌ植物園でみかけたオオウバユリ(トゥレプ)。ころんとした形がかわいい。湖のほとりの丸木舟。実演もあります。体験もできるのかな。ちょっと怖いかも。。


 ポロチセの内部の見学では,生活の中でのカムイとの関わりの説明が興味深い。イナウはこんなふうにも使うんだ。
 旅を終えて,「ジャッカ・ドフニ」(津島祐子)を読み返してみよう,と思う。アイヌの歌の歌詞が繰り返されるこの美しい小説を読むことは,「私たち」と「あなたたち」が近づく一つの方法だと思うから。「浜へクジラがあがってきた フンポ・エー/行ってみようよ! フンポ・エー/浜へ大きなクジラが フンポ・エー/白身の肉をどっさり背負って フンポ・エー/あがってきた フンポ・エー/行ってみようよ! フンポ・エー」(p.457)

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