2021-12-05

2021年11月,東北(2),青森県立美術館「あかし testaments」展

 東北新幹線に乗り込んで,あっという間に仙台,盛岡の次には新青森駅に到着。飛行機で北海道に飛ぶのとはまったく違う感覚で「地続きの北」へやって来ました。天気予報の通りに雪模様だけど,積雪はそれほどでもない。まずはタクシーで青森県立美術館へ。

 金沢21世紀美術館もそうなんだけど,20年前にデザインの最先端だったおしゃれ建築は,時が経つとちょっと悲しい。青木淳の設計した建物は「量塊のなかに設けられた真っ白な「ホワイトキューブ」の展示室隙間と土の床や壁が露出する隙間の「土」の展示室が、対立しながらも共存する強度の高い空間」(美術館HPより)。それが20年を経て床のひび割れの補修跡が目立つし,そもそも美術館内部が観客にとっては動線がわかりにくいし,ちょっとがっかりだったかな(期待が大きかっただけに)。

 とは言え,企画展の「あかし testament」展は見ごたえ満点のすばらしい展示でした。「かつて生じたことで,歴史にとって,失われたと見なれされるものは何ひとつない」というヴァルター・ベンヤミンの言葉が引かれていて,ずっとそれを考えながら豊島重之,北島敬三,コ・ウンスク,山城知佳子の写真や映像作品の世界を渡り歩く。

 東日本大震災10年の年に,青森県立美術館で人々の小さな「灯」を,「証」を見ることによって,あの「歴史」を私は感じることができただろうか。

 そうした文脈をはずれたところでも,豊島重之の「カルト・ポスタルプロジェクト」の詩的な量感や,北島敬三の撮影した外ヶ浜の怖ろしさには心震えます。能曲「善知鳥」の旅の僧は立山からこの外ヶ浜まで歩いてきたんだ。

  豊島重之の直下型演劇の舞台装置。展示室の土の壁。常設展示室の外にある奈良美智の「あおもり犬」。

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