「詩とは何か」(吉増剛造著 講談社現代新書 2021)を読了。口述の書き起こしで,詩人の語りがそのまま活字として目と耳に響いてくる。衝撃が大きすぎて感想めいたことをここに残すのはあまりにおこがましい。忘備として引用したい箇所も多すぎて途方にくれる。「『詩』を越える詩、カフカ」の項から「城」について語るくだりを。
「(略)ここでのカフカの書く力の跳躍は素晴らしいもので,「板一枚」のところについて書いていて,書きつつ,これが「板一枚」のおかげで,別の世界にあっという間に辿り着く,…。(略)ここです。別世界への穴,カフカの「書く手」が,瞬間にして,あるいは一息で届いた,この通路,穴,一枚の板こそが,あるいは,…思い切って書いてしまいますが,「詩というもの」への入口であり,またその出口でもあるのです。こんな教訓のようなことをいうことは決して好きではないのですが,いいですか,この「板一枚」がありさえすれば,これが命の板になって,…わたくしたちも,生きて行くことができるのです。」(p.117)
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