2025-08-10

2025年8月,川崎,「トゥランガリーラ交響曲」(神奈川フィル)・読み返す本「遠い呼び声の彼方へ」(武満徹)

 フェスタサマーミューザのプログラムの一つ,メシアン「トゥランガリーラ交響曲」(沼尻竜典指揮 神奈川フィル)をミューザ川崎シンフォニーホールで聴く。まさに音楽を体感する時間だった。プログラムによればサンスクリット語で「トゥランガ」はリズムの推移,「リーラ」は神々による創造と破壊を意味し,「トゥランガリーラ」は「愛の歌,リズムの研究,喜びの賛歌」を意味する造語だそう。

 沼尻氏は「宇宙を揺るがす愛の賛歌」というキャッチコピーをつけている。プレトークで沼尻氏は「エロスの賛歌」としたかったと冗談交じりに語っていたが,なるほど全10楽章,最終楽章に至るまで壮大な「愛の主題」がクライマックスの官能的な熱狂へと導かれる。ピアノ(北村朋幹)とオンド・マルトノ(原田節)が独奏楽器として演奏される。舞台上のオンド・マルトノが珍しくて開演前には写真撮影の人だかりができていた。神奈川フィルのもの凄い集中力と気迫あふれる演奏に感動。踊る指揮者とコンマス石田泰尚から目が離せない。 

 興奮さめやらず,書棚から武満徹の著作を引っ張り出す。若い頃,大いに影響を受けて草月会館の現代音楽講座などにも通ったことがある。「遠い呼び声の彼方へ」(新潮社 1992)にはメシアンが85年に京都賞を受賞したときの祝辞と,92年の逝去を悼む新聞への寄稿が収められている。

 「メシアンの音楽から私はたいへん多くのことを学んだが,そのなかで時間の色彩と形態という観念について学び,またその実証に触れえたことは,得難い経験として消えることはない。」(p.146)
 

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