「国宝(青春篇・花道篇)」(吉田修一 朝日新聞出版 2025)読了。映画は封切直後に見に行って堪能したのだが,これだけ大ヒットして話題になっているのだから原作も読んでみよう,と思い立つ。朝日新聞に掲載時は,冒頭の場面があまりに凄惨で早々にリタイアしたのだった。
文庫本上下巻を一気読みして,映画も原作もどちらもめっぽう面白い。至高の芸道小説と読んでもよいし,圧巻のエンタメ小説と読んでもよいのでは。私は後者だったな。ここで物語の筋を追うのは無粋の極みだと思うので,こんな女形についての一節を引用しておしまいに。
「生前,先代の白虎はよく言っておりました。女形というのは男が女を真似るのではなく,男がいったん女に化けて,その女をも脱ぎ去ったあとに残る形であると。/とすれば,化けた女をも脱ぎ去った跡はまさにからっぽであるはずなのでございます。」(「花道篇」p.258)
「国宝」に影響されてというわけではないのだけれど,久しぶりに歌舞伎座に。やはり七之助の女形を見なくちゃ,でしょう。「八月納涼歌舞伎」二部は完売なのでこれまた久しぶりに幕見席のチケットを取って(幕見も予約できるようになってた!),いざ4階へ。「日本振袖始」を楽しむことに。七之助の岩長姫実はヤマタノオロチを染五郎のスサノオノミコトが退治する! スカッとすることこの上なし,の酷暑の午後でございました。
0 件のコメント:
コメントを投稿