旅の紀行文は大好き。ぱっと思いつくだけで田村隆一「詩人の旅」,串田孫一「北海道の旅」など詩人の旅,河口慧海「チベット旅行記」みたいな歴史・宗教をたどる旅,ご存知(?)沢木耕太郎「旅のつばくろ」,ぐっとカジュアルに益田ミリの旅日記も楽しくて乗り物の中でよく読む。
ところがこの1冊は,旅する二人があまりに時空を超えた存在なので,頁を繰りながらまるで語り手が二人登場する映画を見ているようだ。先日,「グランドツァー」を観たばかりだからかもしれない。解説に倣えば,ウェールズ旅行は「産業革命萌芽期」の英国を,フランス旅行では「フランス革命14年前」のフランスの様子が描かれるという,興味深いもの。
なるほど,そういう読み方のコツをつかむと俄然面白くなる。興味をひかれたエピソードは数多いが,博士がフランス国王の文庫を訪ねた記述(1775.10.24)は,木活字と木版彫りと金属活字の違いを指摘していて面白い。西洋美術館常設展示の西洋写本コレクションを見に行きたくなる。
もう一つ,夫人がフランス王立博物館を訪ねた記述(1775.10.12)には「最近ビュフォン氏〔フランスの博物学者〕自身が配列した」という珍しい博物標本が詳細に綴られていて,思わず興奮。2023年に町田国際版画美術館で見た「自然という書物」展に出陳されていたビュフォン著「博物誌」を思い出す。そして,神保町で手にいれたビュフォン(風)(オリジナルではないはず)の一葉を手にして,この時空を超えた旅に思いを馳せる。私の宝物の一つ!
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