2012-11-15

2012年11月,東京上野,「中国 王朝の至宝」展

 東京国立博物館で開催中の「中国 王朝の至宝」展に行ってきました(12月24日まで)。中国の歴代王朝を,ほぼ同時代の王朝を対決させるという手法で紹介する展覧会。たとえば「第一章 王朝の曙 蜀vs夏・殷」,「第三章 初めての統一王朝 秦vs漢」といった具合で「第六章 近世の胎動 遼vs宋」までを中国各都市の博物館から借り出した資料で展観することができます。

 実はこの9月,楽しみにしていたユンディ・リのピアノコンサートが中止になってしまい,この展覧会も無事に開催されるかちょっと心配だったのですが,杞憂でよかった。きっと双方のたくさんの関係者の方々の大変な苦労があっての開催なのでしょう。
 
 国宝級(中国では「一級文物」と言うそう)がずらりと並んでいて圧倒されますが,やはり第3章に展示されている兵馬俑はいつどこの展覧会で見ても魅力的。今回は「跪射俑」と「跪俑」が1体ずつ展示されています。360度眺めることができるので,後ろに回って髪型とか足の裏とかじっくり見てみる。

 これらの像は,もともとはすべて彩色されていたというから,色鮮やかな俑がずらりと並んでいる様子を想像するだけでも見ていて飽きない。2体を前にしてこうなのだから,秦始皇帝陵博物院を訪れることができたらどんなに楽しいだろう。ぜひいつか訪れたい博物館の一つです。

(遼の文物の展示の様子。写真は特別開館時に主催者の許可を得て撮影しました。)
 
 今回,心ひかれたものの一つが遼の時代のもの。澄んだ緑色が美しいガラスの四脚盤はイスラムのガラス。遼は契丹族の国です。解説文には「イスラームガラスは当時東アジアで人気を博していた。契丹は西方地域とさかんな交易活動を行っており,この盤もウイグル商人によってもたらされた可能性がある」とあり,一気に頭の中の地図が西に広がりました。

 どんなルートで何を取引していたのだろう,とかこれほど保存状態のよいイスラムガラスが他にも中国でたくさん出土しているのだろうか,とか知りたいことが次々に思い浮かびます。それはさておき,この緑色のガラスはどんな人が大切にしていたものなのか,この美しさを何に喩えればいいのだろう。

 ところで始皇帝の壮大な狂気についてコンパクトに学んだのが「酒池肉林」(井波律子著,講談社現代新書 1993)。インパクトのあるタイトルですが,「贅沢三昧」をキーワードに中国三千年を縦横無尽に駆け抜けて,その精神世界を読む楽しみを与えてくれる本です。

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