第1部はリニューアルした4階から2階の所蔵品ギャラリーを使って,選りすぐりのコレクションが展示されています。旧来の広い空間が小スペースで区切られて,テーマと順路がぐんとわかりやすくなりました。なるほどこうすれば鑑賞者の動線が整理できるんだ,というお手本みたい。
展示の数が多いので,各フロアで心動いたものを1点ずつ忘備録的に。4階ハイライト室の横山大観「生々流転」,3階写真展示室の牛腸茂雄「SELF AND OTHERS」より2点の展示,2階「海外作品とMOMAT」展示室のジョージア・オキーフの花の絵とアルフレッド・スティーグリッツの「三等船室」など4点が並んでいるところ。
さて,会場を1階に移しての第2部「実験場 1950s」は,コレクション展ではありません。独立した特別展という趣の充実した展覧会です。1950年代を現代の原点ととらえ,展示は川田喜久治と土門拳の原爆写真で始まります。絵画,彫刻,版画,映像,写真,書籍などが「実験場」のキーワードのもと,10のコーナーに分けて展示されています。
(小島一郎展示風景。写真は特別開館時に主催者の許可を得て撮影しました) |
7番目の「『国土』の再編」コーナーで木村伊兵衛の写真を眺め,後ろを振り向いた瞬間,足がふるえました。そこには小島一郎の写真。強いコントラスト,何気ない東北の農村風景をドラマチックに変貌させる雲間からのぞく逆光の太陽。荒々しくも,しかし決して観るものを拒絶しない静けさに圧倒されて言葉も出ない。
2009年に青森県立美術館で個展が開催されて話題になったときに,はじめて知った写真家です。ぜひ見たいと思いながら巡回展のない遠方の展覧会だったので諦めてしまい,それ以来名前を思い出すこともありませんでした。調べてみたら,2010年,2011年にもNHKで特集番組があったり東京のギャラリーで小規模展もあったようです。
この展覧会の一室では,木村伊兵衛の徹底したリアリズム写真による東北と,小島一郎の東北を同時に見ることになります。暗室で焼きこんで生み出されるという小島の写真は,「東北」という個性に頼らない,写真家の魂そのものの表出といえるのではないだろうか。
2009年の展覧会当時,あっという間に完売していた図録(写真集)が重版されていて,早速注文しました。もっと詳しくこの写真家のことを知りたい,と首を長くして届くのを待っています。
と,軽く興奮しながらここまで書いてふと気付きました。展覧会場で小島一郎の写真に出会って,深く感動して,もっと知りたくなって本を注文した。その最初の衝撃を一言で言うと?なるほど,「ぶるっ!」ときたわけでした。
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