三鷹の「中近東文化センター附属博物館」に行ってきました。この建物は古代メソポタミアの神殿ジグラットzigguratをイメージしたものだそう。ジグラットとは日乾煉瓦を数層階積み重ねた聖塔ということで,内外装とも,壁面は乾いた色の煉瓦が積み重なったイメージです。入口正面の階段にはこの煉瓦色の壁面に,17世紀のイズニックタイルがさりげなく展示されています。藍色,ターコイズ,そして強烈な赤の色彩の取り合わせが壁の色に映えてとても美しい。
展示室に足を踏み入れると,「パンと麦」,「文字の歴史」などのテーマに沿って,遠い(時間も空間も)文化に生きた人々の息づかいが聞こえてきそうな展示が次々に繰り広げられます。
「工芸の歴史」のコーナーで青銅器やガラス,陶器などの「古くて美しいもの」たちを見るのはまさに至福の時間。ガラスの歴史はメソポタミアの護符の展示から始まります。12~13世紀イランの「ラスター彩」の皿の彩色は,「金色」を表現しているのではなく「金属」を表現しているのかと思うばかりの輝きです。
特集展示は「中近東のむかしのファッション」で,工芸品に描かれた人々の姿から当時の服装などを見ていきます。本の挿絵に描かれた18世紀イランの貴公子は,水色のコート風の衣装と黒い帽子とブーツでばっちり決めポーズ。
この博物館ではこれらの「古くて美しいもの」たちを,落ち着いて安心していつまでも見ていることができます。それはきっと,長く遠い旅をしてきた彼らにとっても,ここはとても居心地のよい居場所だからなのだろう,とそんなことを考えました。
古代ガラスについてとても興味深く読んだ本。「正倉院ガラスは何を語るか」(由水常雄,中公新書 2009)。
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