冷たい雨の降る一夜,カナダ大使館オスカー・ピーターソン・シアターで開催された「グレン・グールド・トリビュートの夕べ」に行ってきました。今年はグールドの生誕80年,没後30年を迎える年ということ。この日はガブリエル・バンサンの絵本「UN JOUR, UN CHIEN」を映像化したショート・ムービー「アンジュール」の上映と,宮澤淳一氏のレクチャー,映画「Glenn Gould's Toronto」の字幕付き上映の3本立てのイベントです。
「アンジュール」はグールドのピアノ演奏が彩る約10分の大人のアニメーション。モノトーンのクロッキーだけで構成された,一匹の犬の長い一日を描いた絵本の世界がそのまま再現された美しい作品です。グリーグのピアノソナタ7番,ベートーヴェンのピアノソナタ13番,バッハの平均律クラヴィーア曲集より前奏曲とフーガ22番が流れ,そしてバッハ/グノーの「アヴェ・マリア」がメインテーマ。
映画のラストシーンに流れる「アヴェ・マリア」は,坂本龍一のプロデュースにより,グールドの演奏に宮本笑里のヴァイオリンの旋律が重なったもの。「時空を超えたコラボ」はなかなかセンセーショナルなコピーですが,何の違和感もなく詩情あふれる画面に寄り添う美しい調べからは,携わったすべての人のグールドへのリスペクトが伝わってくるようです。
ところでイベント後に映画のHPを見てみると,「最後の『アヴェ・マリア』,犬が少年に会えた喜びにとてもフィットしていましたね」と坂本龍一氏がコメントしていて,びっくり仰天。
というのも,私はラストシーンを見たとき,最後に少年の幻影を見た犬が死を迎え,「アヴェ・マリア」は神に召される喜びを表しているのだろうと思いこんで(フランダースの犬的な?),落涙寸前だったのです。誤解だったとわかり,自分の思考回路はなんてネガティブなのか,とちょっと落ち込んだものの,犬の未来にほっと一安心。
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