「森」(1948)の白昼夢のような情景にくぎ付けになる。作品の脇の壁に,画家のこんな言葉がプリントしてあります。「私は現実をある種の《夢》として描き表そうとしてきました。事物が本物らしい様相を保ちながらも詩的な意味を帯びている,そんな夢として。」
熱帯のものらしき植物に囲まれた汽車や裸婦,赤い帳などの「詩的な意味」を考えながら絵に向かっていると,言葉は易しくても難解な詩を読んでいるような,あるいは画家の夢の中に迷い込んでいるような気がしてきて,思わずベンチに座り込む。
幻想的な作品ばかりではなく,初期の印象派風だったりセザンヌ風だったりする風景画に始まって,晩年ほとんど視力を失ってからの作品までが展示されています。モチーフとなった鉄道模型やオイルランプなども。それらに導かれてデルヴォーの人生をたどっているつもりが,いつのまにか深く遠いところへ連れていかれて気付いたら出口に立っていた,そんな不思議な午後の時間を過ごしました。
ところで,私にとってのデルヴォー体験はフリオ・コルタサルの小説「遠い女」の装丁のイメージが強烈なのですが,今回写真を撮ろうと思って書棚を探したけれどどうしても見つからない。処分するわけがないし,図書館で借りたものだったかなあ,いや,神保町で買ったはず,とキツネにつままれた気分。小説の内容もほとんど思い出せず,夢の中で読んだのか?と思い始める。
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