2013-03-08

2013年3月,東京神保町,「みづゑ 1968年11月号」とハンス・ベルメール

 虔十書林で買ったみづゑ1968年11月号には澁澤龍彦による「ハンス・ベルメール 肉体の迷宮」が掲載されています。調べてみると,これはのちに「幻想の彼方へ」(河出文庫)に収められています。

 ハンス・ベルメールは,銅版画もよいけれど球体人形の写真にも惹かれます。エロチックな,という形容はもはや凡庸な言葉でしかない。一度目にしたら忘れられない人形たちの形態,ポーズ。そして澁澤龍彦がシュルレアリスムのデペイズマンの効果を出そうとしているものだ,と指摘している唐突な背景(=情景)。

 写真家としてのベルメールを日本に広く紹介したのが澁澤龍彦その人とされていて,「写真家ベルメール」(『世紀末画廊』(河出文庫)所収)には「なるほど,これまでにも私たちはベルメールの人形の写真をよく眺めてはきた。彼がみずから人形の写真を撮ることをよく知ってはいた。しかしその写真を,どちらかといえば私たちは彼の人形を知るための手段と解してきたような気がするのであり,写真それ自体として眺めてこなかったような気がするのである」とあります(p.170より引用)。

  生温かい強風とともに冬から春へと突然切り替わった日の夜更け,一人書斎の明かりを暗くして古い雑誌のベルメールの版画や写真を見ていると,何かひどく背徳的なことをしているような気分になる。

 ベルメールはパートナーであるウニカ・チュルンの肢体の(これまた)エロチックな写真も撮影していますが,彼女の「ジャスミンおとこ」(みすず書房)はいつか読もうと思い続けてずっと書棚に眠っている本。「分裂病女性の体験の記録」という副タイトルのついているこの本は,みすず書房の心理・精神医学関連書籍に分類されています。かなりハードルが高そうなので,いずれ強靭な精神状態のときに読むことにしよう。

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