2013-03-11

2013年3月,東京上野,ラファエロ展

 上野の国立西洋美術館にでかけてラファエロ展を見てきました。「ヨーロッパ以外では初となる大規模な個展」ということで,これは混雑しそう。開幕早々に足を運ぶことに。
 展覧会の目玉になっている『大公の聖母』が圧倒的な魅力でした。18世紀末に所有者だったトスカーナ大公フェルディナンド3世は,生涯手放すことなく寝室に飾っていた,とキャプションにありますが,この1枚を所有しているというだけでなんと幸せな人生だったのではないか,と思えてしまうような美しさ。このような絵のことを「珠玉」というのだろうなあ,と思う。

 ところで,黒一色の背景が聖母子の気品と美しさを際立たせて,なんてドラマチック!と感激していたら,もともとは背景には窓のある室内が描かれていて,後世に塗りつぶされたものだということ。絵具の層が深すぎて復元は不可能ということですが,復元しなくてもよいのではないかな,と感じてしまう。それは巨匠に対して失礼というものではないか,と思いつつ。

 レオナルドに影響を受けたという『無口な女(ラ・ムータ)』の表情もとても印象に残ります。『聖ゲオルギウスと竜』,『エゼキエルの幻視』などなど,フィレンツェやパリからやってきた名作の数々を前に,贅沢な時間を堪能しました。

 ところで「画家の規範」と称えられ,名だたる画家の美の規範となってきたラファエロですが,19世紀半ばの英国で「ラファエロ以前に戻ろう」という決意のもとに結成されたのがラファエル前派The Pre-Raphaelite Brotherhood。P.R.Bのファンとしては,彼ら若き画家たちにとっての「因襲的」「アカデミズム」という乗り越えるべき壁として眼前に立ちはだかっていた巨匠の希有な展覧会を見て,なるほどこれは偉大なる壁にほかならないわけだ,とあらためて実感した一日でした。

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