2014年最初の展覧会は東京国立近代美術館にでかけてジョセフ・クーデルカの写真を見てきました。チラシやポスターはシンプルで,詩情あふれるモノクロームが配されています。フォントが美しい。
写真美術館で2011年に開催された「プラハ1968」が記憶に新しいので,昨秋に初めて開催を耳にしたとき,おや,またクーデルカ?と思ってしまいましたが,会場は「回顧展」の意味がよくわかる展示です。ジャーナリスティックな「プラハ1968」の仕事は彼の活動の中でむしろ特異な位置を占めるものであって,「ジプシーズ」や「エグザイルズ」のシリーズの詩的な美しさには圧倒されます。
特に初期のヴィンテージプリントはそれぞれが1編の詩そのもの。オフィスで働く男性の細い腕と,デスク上のペンを逆光でとらえた1枚は,その2本の線が画面上で平行して走る一瞬に,これ以上の美しさがあるだろうか,と息を呑む。
プラハ侵攻後,国を追われて亡命したのちにヨーロッパ各国で撮影された「エグザイルズ」のシリーズは,「亡命者という自身の境遇が反映されている」と解説パネルにはありますが,どこか突き放した醒めた視線を被写体に向けているように感じられます。決して「私小説」にはなっていないと思うのです。
フランスの雪原にうろつく1匹の野犬は,クーデルカが見た1匹の犬であって,クーデルカの姿が投影されていたりはしない。だからこそ,この荒ぶる魂を持つ犬に対してカメラを向けたクーデルカの心境に共振を覚える一瞬,写真を見る喜びに身が震える思いがします。
コレクション展の会場には,クーデルカと同年生まれの森山大道の「にっぽん劇場」全100点も展示されていました。ほかにも安井仲治の「流氓ユダヤ」など,新年早々,写真を堪能した午後。
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