2020-10-25
2020年10月,Curtis's Botanical Magazine,時計草の植物画
2020-10-24
2020年9月,北海道(5),ウポポイ 民族共生象徴空間
ずいぶん以前のことだけれど,函館の北方資料館を訪れたことがあって,アイヌの手仕事やアイヌ絵には爾来惹かれてきたのです。なのでウポポイのオープンはとても楽しみでした。旅の最終日,札幌から白老へ。帰路はそのまま千歳空港へ向かう予定です。駅でコインロッカーに荷物を入れて,いざレッツゴー。
施設に足を踏み入れると,美しい湖が目の前に広がります。広さは一日で回り切れないほどの規模ではありませんが,体験交流ホールや学習館,屋外ステージや工房など,プログラムがぎっしりなので,効率的に回らないと半日では時間が足りないかな,という感じです。
アイヌの神カムイの視点を体験する映像「カムイ アイズ」や,伝統的な歌や踊り,楽器演奏の「シノッ」の上演などなど,整理券を求めて列に加わりながらプログラムを楽しんでいると,ちょっとテーマパーク的なワクワク感が。シノッでは鶴の舞「サルルンカムイ リムセ/サロルン リムセ」に感動。そして国立アイヌ民族博物館は久米設計による美しい建物です。1階はシアターとライブラリーやショップなど,2階に展示室が配置されています。常設展示は中心部に円形に代表的な資料を並べ,外周に詳細な展示を展開するというもの。テーマは「私たちのことば」「私たちの世界」「私たちのくらし」「私たちの歴史」「私たちのしごと」「私たちの交流」の6つ。すべてアイヌ語の表示が第一言語となっています。
そうか,ここでは「私たち」=アイヌの人たちが主語なんだ。アイヌの人たちの美しい手仕事の展示を楽しもう,と呑気に訪れた私にはこの展示はかなり驚きの連続でした。アイヌが受けた苦難の歴史の展示では胸が苦しくなってきます。苦難の歴史は誰が行ってきたものかの視点がぼかされている,という評も耳にしますが,ここを訪れる人にとってはそれは自明のことであって,展示を見て人として深く考える場ではないのか,とそんなふうに感じたのでした。
旅を終えて,「ジャッカ・ドフニ」(津島祐子)を読み返してみよう,と思う。アイヌの歌の歌詞が繰り返されるこの美しい小説を読むことは,「私たち」と「あなたたち」が近づく一つの方法だと思うから。「浜へクジラがあがってきた フンポ・エー/行ってみようよ! フンポ・エー/浜へ大きなクジラが フンポ・エー/白身の肉をどっさり背負って フンポ・エー/あがってきた フンポ・エー/行ってみようよ! フンポ・エー」(p.457)
2020年9月,北海道(4),小樽・運河・小樽芸術村
2020-10-23
2020年9月,北海道(3),余市蒸溜所
2020-10-18
2020年9月,北海道(2),北菓楼・北海道大学総合博物館・弘南堂
また間が空いてしまいました。やっと少し余裕ができてきて、今頃になって9月の旅行の写真整理と忘備録などを。
札幌で文学館の次に向かったのは北菓楼札幌本館。大正15年に行啓記念北海道庁立図書館として建てられて,三岸好太郎美術館など美術館としても使われてきた建物が2016年に安藤忠雄によってリデザインされたもの。2階のカフェの壁面は6000冊の本が並びます。天井のデザインがすてきだ。建物の歴史を大切にしたデザインは上野の国際子ども図書館にも通じる雰囲気があって,とても気持ちのよい場所でした。
おいしいメニューにも大満足して次に向かったのは北大キャンパス。天候がよければ植物園にも行きたかったのだけれど,冷たい小雨の中,総合博物館へ。
収蔵標本が展示された3階が圧巻です。最初はウケてた標本展示(階段の脇にクマが座ってる!)も,バンビちゃんと親鹿が佇んでるあたりからだんだん怖くなってきた。。アイヌ・先住民研究センターのブースでは,ここでもウポポイの予習に励む!あっという間に時間がたって,博物館を出たのは薄暮のころ。北大はキャンパスというより広大な森ですね。一人とぼとぼと北13条門へ向かう道のりはなんとも心細いものでした。
さて,門を出て街中へ戻ると元気百倍。今回楽しみにしていた古書店の弘南堂は門の目の前です。「池澤夏樹の旅地図」(世界文化社 2007)所収の「旅先の本屋で」という短いエッセイに登場する古書店。目次ページには作家が書棚を眺める書店内景の写真も掲載されています。
「旅先で本屋に入って裏切られることは少ない」(p.246)という教え通り,文学館の展示がそのまま書棚に展開されているような充実ぶりに興奮。美術書のコーナーではアイヌ文化の充実ぶりにまた大興奮。ただ,「旅の途中で本を買うことの問題点は荷物がどんどん重くなること」(同)とある通り,あまり見境なく買うのはやめておこうと決めました。
で,選んだのが「蠣崎波響伝」(永田富智 道新選書 1988)と「北海道の樹木と民族」(伊達興治 北海道出版企画センター 1995)の2冊。これならバックパックの中で旅の伴にできる,と店を出たのですが,あとになって串田孫一の「北海道の旅」の初版函入りを棚に戻してしまったのを後悔しきり。取り寄せたり,神保町で探したりもできるだろうけど,「旅先で買う」というその行為を,本の重さのためにあっさり諦めた我が愚かさよ(おおげさ)。
さて,北海道初日の札幌ぶらぶらはこれでおしまい。2日目は余市と小樽へ!