夢見心地で首藤康之のダンス公演を見て現実世界に戻って(?)くると,WHITE ROOMの中でイリ・キリアンが朗読していたベケットが気になってきました。WORSTWARD HOは英語で書かれた散文詩で,邦訳「いざ最悪の方へ」(長島確訳,書肆山田 1999)があります。
日本語訳から朗読された部分を探すのは困難なので,聞き取れた単語の断片の記憶を頼りに原文をたどってみました。前後の部分が含まれているかは曖昧ですが,たぶんコアはこの部分だと思います。(的外れだったらお恥ずかしい限り。)日本語訳は長島訳,原文はhttp://www.samuel-beckett.net/w_ho.htmからの引用です。
「彼らは薄れていく。いま一人。いま二人。いま両方。現れてくる。いま一人。いま二人。いま両方。徐々に?いや。突然消え去る。突然戻る。いま一人。いま二人。いま両方。/変わらず?変わらず突然戻る?そう。そうと言う。毎回変わらず。どうにか変わらず。ちがう,まで。ちがうと言うまで。変わって突然戻る。どうにか変わって。毎回どうにか変わって。/薄暗さ。虚空。も消え去り?も戻る?ちがう。ちがうと言う。けっして消え去らず。けっして戻らず。そう,まで。そうと言うまで。も消え去り。も戻る。薄暗さ。虚空。いま一方。いま他方。いま両方。突然消え去り。突然戻る。…」(pp22-23より引用)
“They fade. Now the one. Now the twain. Now both. Face back. Now the one. Now the twain. Now both. Fade? No. Sudden back. Now the one. Now the twain. Now both./Unchanged? Sudden back unchanged? Yes. Say yes. Each time unchanged. Somehow unchanged. Till no. Till say no. Sudden back changed. Somehow changed. Each time somehow changed./ The dim. The void. Gone too? Back too? No. Say no. Never gone. Never back. Till yes. Till say yes. Gone too. Back too. The dim. The void. Now the one. Now the other. Now both. Sudden gone. Sudden back. ....”
ベケットの散文の「意味」を理解することは英語でも日本語でもとても難しいし,首藤康之と中村恩恵の舞踊の「意味」をここに見つけることももっと難しい。でも,「動き」には意味によって完成する美しさもあるのではないか,とも思うのです。
2 件のコメント:
Susanさん、はじめまして。
Junkoと申します。現在仕事はしておりません。ブログを拝見して、感動、投稿させていただきました。
わたしも首藤氏の作品の大ファンで、可能な限り劇場に足を運ぶようにしています。
あの断片から、ベケットに辿り着くSusanさんの知性に脱帽です。優しい先生が、そっと模範解答を示してくれたような、感激です。芸術鑑賞にただひとつの正解などないのだとしても、です。
原文、訳文ともにご提示いただき、原文のelaborationのほうを、自分なりに読んでみました。途中まで読んで、これは、この過程はまさに首藤氏が創作に向かうときの極限、そのものではないかと感じました。タイトルや意味はこの際、含みません。
わたしが今回のDedicated2012 Imageを観た直後の感想は、「素晴らしい」、そして「恐ろしい(ほど素晴らしい)」でした。その理由が、今ここで少し明らかになった気がしています。
ソンタグやプロヴォーク、多木浩二氏など、気になる言葉がたくさん散りばめられたsusanさんのブログ、これからも楽しみにしています!
コメントありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします。
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