2012-10-22

2012年10月,神奈川芸術劇場,首藤康之 DEDICATED 2012

 神奈川芸術劇場KAATで首藤康之のダンス公演DEDICATED 2012 IMAGEを見てきました。以前から好きなダンサーですが,1月に東京都写真美術館でドキュメンタリー映画「今日と明日の間で」を見てからますます魅かれるようになりました。7月に東京バレエ団のカルメンでホセを見たのに続いて,今回は映像とコラボしたコンンテンポラリーのナンバーを。


 最初の「Between Today and Tomorrow」は映画の冒頭と最後に流れたソロ。やはり生身の舞踊は二次元のスクリーンで見るのとは印象が違います。舞台を縦横に躍動する研ぎ澄まされた肉体に思わず息を呑んでしまう。

 続いてドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」が流れてスクリーンに「The Afternoon of a Faun~ニジンスキーへのオマージュ」が映し出されます。これは操上和美(映像監督),柘植伊佐夫(ビューティーディレクション)とともに作りこまれた美しい映像作品。

 そしてメインのプログラム「WHITE ROOM」は中村恩恵(振付)とのデュエットで,舞台上のダンスと操上和美の映像の中のダンスがリンクします。この作品はイリ・キリアンのアドバイスでチェーホフの「かもめ」に想を得ているということ。

 インタビューで首藤は「『絶望から忍耐へ,忍耐から希望へ』という,生きる希望を見いだせる作品になればと願っています」と答えています。そして作品の中盤ではイリ・キリアンがベケットのWORSTWARD HO「いざ最悪の方へ」を朗読する声も流れ,観客にはIMAGEのヒントがいくつも与えられます。

 ワグナー他,高揚感溢れる音楽と二人の絡みあうような動きを見ながら,目の前のこの二つの身体の存在そのものが観る人である私にとっての今であり未来(=希望)なのではないか,とそんな風に感じます。首藤康之の美しい肉体が神々しいものにさえ見えてくるのでした。

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