以前,祖父の本棚から見つけた小箱にはこんな人形も入っていました。高さ6センチ弱の小さな小さな少女です。薪を背負って,大地に一歩を踏み出すところ。これで手に本を持っていたら少女版の金次郎さん?
裏面にRosenthalの文字と王冠と薔薇のマークがあり,その下の文字はBavariaと読めます。ローゼンタール窯のフィギュアは1910年ごろから製作が始まり,王冠と薔薇のマークがあるのはゼルプのBanhof工房というところで製作されたものということ。1933年以降はGermanyと国名が表記されるようになるので,Bavariaと表記があるのはそれ以前のものということがわかりました。
1933年以前は,窯の創業者でオーナーのフィリップ・ローゼンタールが若いアーティストを起用して,モダンな作風のフィギュアを製作させていたそうで,この少女もその中の一つということなのでしょう。
フィリップ・ローゼンタールはユダヤ人だったため,1933年にナチスが政権を握ると,翌年には窯のオーナーの座を追われてしまいます。その後は窯で製作されるフィギュアの作風も変わっていったのだそう。
異郷の地に滞在した若き日の祖父は,まさに若い感覚で当時のモダンな一品を選んだのか,それとも単に二宮金次郎ふうのポーズが面白かったのか,生きているうちにこの人形を見つけて聞いておけばよかった。