2012-10-05

2012年10月,東京馬喰町,宮本隆司写真展「薄明のなかで見よ」

 馬喰町のギャラリー,TARO NASUで宮本隆司写真展「薄明の中で見よ」を見てきました。120度パノラマを撮影できるというスイス製のピンホールカメラで撮影された約30点が,地下の白い壁の空間に並んでいます。地下へは鉄製の灰色の階段を下りていきます。

 すべてブルーが基調の縦長のイメージ。1枚1枚の風景は自然の風景だったり工事現場だったりスカイツリーだったり。写真と合わせて写真家本人のメッセージを読むと,「レンズ,フォーカス,フレーム,シャッター・スピードなどカメラの基本的な機能を極限まで取り去った」ピンホールカメラで撮影される写真の特徴がよくわかります。

 このメッセージには「柔らかくていいかげんで曖昧な」というタイトルがついていて,そのあとに続く名詞が気になります。この場所にある「柔らかくていいかげんで曖昧な」のは「写真」であって「風景」であって「世界」でしょう。ふと,「私」を続けてみたらどうなんだろうと思いをめぐらします。

 写真家は,薄明のなかで何を見ろとこれらの写真を差し出したのでしょうか。無機質な光を放つ蛍光管の下,いやおうなしにガラス面に写りこむ自分のぼんやりした輪郭を見つめながら,「柔らかくていいかげんで曖昧な私」と声に出さずにつぶやいてみる。「私」は「存在」と言い換えてもいい。

0 件のコメント: