冷たい風の吹く午後,新国立劇場の小劇場で「音のいない世界で」(長塚圭史作・演出)を見ました。
物語は,大切なカバンを二人組の泥棒に盗まれたことで「音」を失った貧しい女性・セイが,そのカバンを取り戻す旅に出ます。そしてセイがいなくなったことでやはり「音」を失った夫も妻を追って旅に出るのですが,二人は無事に会えるのか,カバンを取り戻すことはできるのか。
夫婦役は松たか子と首藤康之,他の出演は近藤良平と長塚圭史。長塚圭史の紡ぐ物語は,品がよく,寓意に満ちた静謐な世界です。近藤良平と首藤康之の身体表現は鮮やかで軽やかですが,舞踊劇ではありません。
「こどもも大人も楽しめる不思議な一夜のものがたり」(公演チラシより引用)とあるわりには,大人にとっても(私だけかも)難解な物語でした。カバンの中身は「音」そのものなのか,世界から消えた「音」とは何を意味するのか,カバンを盗んだ兄弟とは結局何者だったのか?「何も見えない自分は存在しないも同じ」と嘆く,音のいない世界の盲目の店主の台詞も観念的で,難しい。会場には子どもさんの姿もチラホラ見えましたが,このものがたりを楽しめたでしょうか。
松たか子の舞台は初めて見ましたが,華やかで,透明な声がとても綺麗。ラストの美しい夜明けにはほっとしましたが,新年の贈り物は私にとってちょっと重たいものでした。
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