2013-01-09

2013年1月,東京渋谷,「白隠」展

 渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで2月24日まで開催中の「白隠展」を見てきました。副タイトルは「禅画にこめたメッセージ」とあります。新年の華やかさをまとうシブヤの街でさて,江戸時代に生きた禅僧から何を受け取るのか。
 
 会場の中心は,達磨図ばかりを並べた六角形の部屋。ぐるりと囲まれると圧巻です。縦2メートル近くあるという「半身達磨」(萬壽寺蔵)は通称「朱達磨」。墨で真っ黒に塗りつぶされた背景に,朱の衣の達磨がぐいっと浮かび上がる。賛の「直指人心 見性成仏」は「自分の心にこそ仏が宿り,それを自覚することで仏になる」という意味だそう(解説パンフより)。画像などで見るよりも鮮やかな色に驚く。
 
 この日は展覧会監修の山下裕二氏から,白隠の魅力について数々の興味深い話を聞くこともできました。展覧会の構想は12年前に海外のコレクション展であるZENGA展が開催された時から始まったということ。そこから,鈴木大拙らによる海外への禅の紹介と受容の話,ジョン・レノンも白隠を所有していて「イマジン」の歌詞にも影響を与えたという話などなど,興味が尽きない。
 
 白隠は生涯で1万点近い書画を残しており,まさに命がけで描くことによって仏の教えを人心に伝えようという生き方を貫いたということ。今回の展覧会は日本各地の40数か所の所蔵者から厳選された100余点が展示されています。色っぽい観音さまやユーモアたっぷりの布袋さまなどにも目を奪われますが,丁寧な解説キャプションに助けられて賛の意味がわかると,時空を超えて白隠禅師から説法を受けている気分になります。
(主催者の許可を得て撮影しています)
 
  墨蹟のコーナーもストレートにメッセージが伝わってきます。「暫時不在 如同死人」は巌頭和尚(唐時代の僧)の言葉。「一瞬たりとも心理を追及する心がお留守になれば,死人も同然である」(キャプションより)。数百年前に生きた一人の禅僧が,たっぷりと墨をふくませた筆で,仏の教えそのものを今ここに表現しているという事実に背筋が伸びる思い。

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