2013-11-18

2013年11月,アムステルダム(6),海洋博物館/アンティークマーケット/パイプミュージアム/世界の果て書店


 アムステルダム滞在5日目,11月1日はまずはトラムでセントラル駅に向かい,駅の東側にある国立海洋博物館を訪れることにしました。駅から10分ほどの東埠頭まで歩くと,アムステルダム公共図書館Openbare Bibliotheek Amsterdamの建物が見えてきました。2007年に開館したヨーロッパ最大の公共図書館ということ。9時オープンの博物館に合わせて出かけてきたので,10時開館の図書館はまだオープンしてません。残念だけど外観と入口付近を覗き込んで直進。
 国立海洋博物館Het Scheepvaartmuseumも2007年から改修工事を行って2011年にオープンしたばかりということ。外観は古い武器倉庫で,外からは見えませんが,中庭がガラスと鉄鋼の天井で完全に塞がれていて,想像以上に規模の大きいミュージアムです。展示は海洋国家の過去の栄光と帝国主義的発想の成果を示すものが延々と続くわけですが,展示の仕方がとてもダイナミックで斬新です。 
 
 16世紀,17世紀~のものたちが生き生きと館内で躍動しているイメージと言えばよいのか,船の模型の展示もまるで自分が小さくなって船の上にいるような気分になります。映像関係もたくさんあって,大人も子どもも楽しめるミュージアムでした。船旅を体験できるという3D(約15分だったかと)は船酔いしそうだったので(…)パスしました。屋外には東インド会社の帆船アムステルダム号(復元)が展示されています。雨で通路がすべりがち。落っこちないように気をつけよう。

 思いのほか,たっぷり時間をかけてしまい,かなり歩いたこともあって帰路はセントラル駅までバスに乗ります。図書館は,まあいいか,ということにしてしまった。さて,駅からはまたトラムに乗って,市街の西に位置する屋内のアンティークマーケットを目指します。入口は小さいけれど,中に入ると広いこと広いこと。ぐるぐる歩き回って,魅力的なものをいくつか見つけて購入。デルフトのティーボウル,ハンガリーの香水瓶,ほかにワイングラスや絵皿なども。
 
 さて,次に向かったのはPrinsengrachtにあるパイプミュージアム。ここは,夏休みに金沢のアンティーク・フェルメールを訪ねた際,店主の塩井さんが薦めてくれたところ。ミュージアムの入口がわからず,地階のショップに入って尋ねたら,そこが入口になっていました。入館にはミュージアムカードが使えます。階上の展示室を丁寧な説明をしてもらいながら1周,各国の古いパイプコレクションが圧巻です。地階のショップで素敵な鼻煙壺に出会いました(次項で)。
 あっというまに夕刻です。日暮れの前に,毎週金曜日にスプウ広場で開かれているという古書市へ大急ぎで向かう。American Book Centerの前の広場が会場になっています。英語の画集や写真集も多く,目移りしてしまうのですが,これぞ,というものはなかなか見つかりません。ラルティーグが少年時代に撮影した写真集BOYHOOD PHOTOS OF J.H. LARTIGUEのソフトカバー版があって,そのときは本の状態がよくないし,20ユーロ(3000円弱)は微妙だし,と思って購入しなかったのを今は後悔(こんなのばっかり…)。
 すっかり日が暮れてきました。スプウ広場からSingel運河沿いに少し北へ歩きます。今回,ぜひ訪れたかった書店へ。平出隆がドナルド・エヴァンズをたどってアムステルダムに滞在したときのことを綴った短いエッセイが「ウィリアム・ブレイクのバット」(幻戯書房)というエッセイ集に収められています。その目次の最初に登場するのが「世界の果て書店」という名前の書店です。
 
 エッセイでは「運河沿いにある」「第三世界や辺境の本を扱う」「地階には,音楽関係を扱う世界の果てミュージックがある」「壁に世界の果て書店と書いてある」という記述しかありません。しかも平出氏が訪れたのは1980年代のこと。いろいろ検索したものの現地での住所はおろか,店名もわからず途方にくれていたところ,書店をはじめ,オランダのいろいろな情報を紹介しているアムステルダム在住の日本の方のブログを見つけたのが出発の10日ほど前。半ばすがる気持ちでコメント欄から質問してみたところ,すぐに「世界の果て」という意味のフランス語Bout du Mondeという名前の書店がシンゲル運河沿いにあると教えてくださったのです!お店のアドレスやHPも教えていただき,1970年代から開業しているというこの店に間違いないだろう,という確信のもとでかけてみました。
 
 現在扱っている本はインドや精神世界に関するのものが大きな比重を占めているようですが,アフリカやアジア関係のたくさんの本。そして入口の右手側の階段の地下には古いLPレコードがぎっしりと詰まったショップも。別の名前の看板が出ていましたが,「ここも以前はBout du Mondeという店名でしたか」と気難しそうなレジのおじさんに聞いてみたら,「??」という沈黙のあと,Yes.と一言。間違いあるまい(私の英語がちゃんと通じていたら)!
 こうしてまた,画家の人生を辿る詩人の旅の一コマを辿ることができて,本当にうれしい体験となりました。本当に親切で心優しい方のおかげです。階段でこけそうになりながら,通りに出て何枚も写真を撮りました。日の暮れたアムステルダム,運河のほとり,「世界の果て書店」。一生忘れないと思う。

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