2013-11-07

2013年10月,アムステルダム(1),まずはDonald Evans

 アムステルダムに到着したのは,欧州にすさまじい嵐が吹き荒れた日の午後遅い時間。スキポール空港の名前の由来は「船の地獄」というのだそう。幸い,飛行機の地獄にはならず,ほぼ定刻通りにスムーズにランディングしました。タクシーで市街のホテルに到着しても,窓の外は強風と驟雨。日暮れまで少し時間がありそうだったものの,この日は身体を休めることにします。
 
  二日目,10月29日の朝は早めに眼が覚める。雨混じりの曇り空。ほとんどの美術館は10時開館なので,まずは9時開店の古書店を目指すことに。ホテルからアムステルダム大学の構内を東に抜けると,Antiquariaat A. Kok & Zn.はすぐに見つかりました。店内の正面奥に文学や哲学書がずらりと並び,右手の壁面と中央の台をぐるりと取り巻くように,美術書・画集・建築関係などが充実しています。その台の上には植物・風景・室内などなど,モチーフごとに整理された古い版画類が並んでいて,手頃なお土産探しに楽しい。1890年頃と書かれた古物図版のようなリトグラフを1枚購入。
そして,いきなりThe World of Donald Evansの1980年版(Text by Willy Eisenhart, Uitgeverij Bert Bakker)を発見。アムスの古本屋をめぐってDonald Evansが見つかったらいいな,と思っていたのが初日の9時30分に見つかってしまいました。ちょっと速すぎないか。しかもびっくりするくらいの格安値です。
  防水紙で丁寧に梱包してくれた本とリトグラフを大切に抱えて,店からさらに東の方向へ,次はKrom Boomssloot 63番地を目指します。「クロムボームスロート」という耳慣れない響きのこの場所の5階の屋根裏部屋にドナルドは滞在していて,そしてその人生の時間は突然,断ち切られました。

  彼の作品というより,平出隆の著作「葉書でドナルド・エヴァンズに」の読者である私には,その場所に「巡礼」するのは畏れ多いのだけれど,鼻の奥がツンとするような感情に,むしろ戸惑う。画家にとってのもう一つの世界を固い扉の向こうに見た詩人の旅を,私は辿っている。その詩人の旅は,「書物」というもう一つの世界の出来事なのだから,私にとっては「二重に閉ざされた」もう一つの世界がここKrom Boomsslootにあるわけだ。運河に面した,ひっそりとした通り。
 さて,この後は怒涛の美術館・展覧会めぐり。思ったよりも街のスケール感が大きいので,トラム一日券を購入して路線図を握りしめてスタートです。

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