冷たい雨の降る夕刻に赤羽橋のPGIへ向かい,三好耕三の写真展を見てきた。タイトルのOn the Road Againが示すように,彼は「ロード・トリップ」を1970年代から40年以上も続けてきたのだという。展覧会のリーフレットには「ロード・トリップはメディテーション。ただフロントガラス越しの視界と対峙して,最低限の約束を肝の片隅に預けおき,あとは確と座するだけ。」とある。
16×20インチの大判カメラを用いているのだそう。美しいプリントは,しかし,修行僧の厳しい美意識という一面も確かに漂わせつつ,どこか達観した余裕みたいなものがある。ロードを無心で走りつつ,空腹になればそれを満たすためにカフェにも立ち寄る。カフェの店員が温かいまなざしを向ける1枚は,写真家と被写体の魂の交感みたいなものさえ感じさせる。
三好耕三の写真を初めて知ったのは,もう20年近く前になるかもしれない。東京国立近代美術館フィルムセンターで見た写真の通史の展覧会で強烈な印象を受けた。その時の写真がSee Sawというシリーズの1枚で,たぶん高架下の建造物にあたる光と影のコントラストが強烈な1枚。そして,その1枚もどうやらロード・トリップの副産物だったということを,時を経て知った。
それがどうした,という話かもしれない。しかし,写真を見続けることに「意味」を与えるとするなら,私にとってはかなり親密な事件ではあった。
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