随分長い間,積読になっているのに気付いていたけれどもなかなか手に取ることがなかった1冊(岩崎力訳,岩波文庫 1995)。たしか,平野啓一郎がいつかどこかに面白かったと書いていた記憶がある。
ユルスナールは須賀敦子の著書「ユルスナールの靴」(1998)が印象に残る作家で,それ以上でもそれ以下でもなかった。読後,その時空を超えた「愛と死」という壮大なドラマに読書の至福を味わう。エリックとコンラート,そしてソフィーの生き方と愛の表現に自分の共感を重ねていく作業は,なぜ小説を読むのか,という問いの答えの一つだろう。
「断罪された者の首に巻きついた紐の結び目をしめあげるのに,運命ほど秀でたものはないという。しかし私の知るかぎり,運命が得意とするのは紐を断ち切ることのほうである。人が望もうと望むまいと,結局運命が問題を解決するためにとる手段は,すべてを厄介払いすることなのだ。」(p129より引用)
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