2013-05-15

2013年5月,東京六本木,アメリカ先住民の肖像展

  夏を思わせる陽ざしがまぶしい午後,東京ミッドタウンの写真歴史博物館で開催中の「エドワード・S・カーティス作品展 アメリカ先住民の肖像」を見てきました。この博物館はFUJIFILM SQUAREの中にあります。クラシックカメラや,富士フィルムの写るんですシリーズなどが展示されているコーナーの壁を一面使っての展示。作品の数は多くはありませんが,印象に残る展示でした。E・S・カーティス(1868-1952)はウィスコンシー州に生まれ,自らを「消えゆく文化の目撃者」ととらえていた写真家です。

  被写体のアメリカ先住民族への興味と,美しいプリントへの興味が重なります。例えば「ズニ族の酋長」(1905)は,男性の凛々しい眼差しが銅版画のようなフォトグランビュールの画面に刻まれています。オロトーン技法という金色に輝くプリントは,アーツ&クラフト運動の隆盛期にインテリアとして好まれたということで,素朴なフレームとともに展示されていました。

 そしてプラチナプリント。「精緻で微妙なトーンときめの細やかさを持つ」(展覧会パンフレットより)というこの技法の,「キャニオン・デ・シェイ ナヴァホ族」(1903)などは,まさにグレーの諧調の美しさを堪能できます。以前,ある美術館のワークショップ・アトリエでプラチナプリントの実習講義を受けたことがあって,「表現としての技法」の面白さは体感済み(えへん)。しかし,素人の付け焼刃とは次元の違う美しさに瞠目しきりです。

 崩壊しつつあったインディアン社会に入り込み,その豊穣な文化と民族の誇りを美しいプリントとして後世に残した写真家の矜持がここにあるのだ!と思いながら展覧会パンフを眺めていたら,図版とタイトルの相違を発見。黙っているのは写真家に失礼な気がしてきて,会場の係の人に伝えることに。こういう行為はあまり好きではなくて(クレーマーみたいで),丁寧な対応に逆に恐縮してしまい,そそくさと会場を後にしました。

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