2012-12-10

2012年11月,ロンドン(4),小説の舞台,ホテルラッセル

 ロンドン3日目,日曜日の朝は快晴。この日はロンドン中心部から少し離れたAlexandra Palaceのアンティークフェアに出かけます。最寄駅のWood Green 駅にはRussel Square駅から地下鉄ピカデリーラインで一本で行けます。

 少し早めにホテルを出て,ホテル・ラッセルThe Hotel Russelの前を通って地下鉄駅へ向かう。このホテルは,マリオ・バルガス=リョサの小説「悪い娘の悪戯」で,1960年代後半から1970年代にかけて,ロンドンで大富豪夫人となっていたニーニャ・マラと主人公リカルドが密会を重ねる舞台です。

 さすがは老舗という風格です。リカルドは当時のヒッピーの街アールズコートからここラッセルスクエアまで足しげく通うわけですが,ニーニャ・マラはなぜこのホテルを指定したのだろう。

 ロンドン大学や大英博物館に近いこの静かな街は奔放なニーニャ・マラのイメージと重ならない。ロンドンでの自分のアイデンティティをリカルドに誇示するために,わざわざこのホテルを選んだのか,と思えてきます。

 しばしカメラを手に虚構の世界に思いをめぐらしていると,ホテルから出てきた男性がリカルドのようにも,作家のリョサのようにも見えてしまう。自分がロンドンにいること自体が虚構のできごとに近い(!)ので,なんだか頭がこんがらがってきました。もうカメラをしまって駅へ向かうことにしよう。

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