2014-04-20

読み返した本,「誰がパロミノ・モレーロを殺したか」(マリオ・バルガス=リョサ)

 「誰がパロミノ・モレーロを殺したか」(マリオ・バルガス=リョサ著,鼓直訳;現代企画室 1992)を読み返してみた。ナサニエル・ホーソーンの「人面の大岩」に収められた「ヒギンボタム氏の災難」を読んだときに,あれ,よく似た話を読んだことがある気がする,と感じたのがきっかけだ。
  ホーソーンが「ヒギンボタム氏」を書いたのは1834年ということで,リョサより150年以上も前になる。よく似ている,と感じたのは,木に吊るされた惨殺死体,白人/非白人の二項対立という大きな設定が共通していたからかもしれない。

 「誰がパロミノ・モレーロを殺したか」はリョサが描くあらゆる小説スタイルの中では,「推理小説」に位置づけられるものだが,シルバ警部補と警官リトゥーマの絶妙のコンビの活躍がユーモラスに綴られている。陰鬱に沈まずに軽妙に語られる,不可侵の境界を超えようとして引き起こされた無残な死。

 いみじくも,ホーソーン「人面の大岩」の序文でホルヘ・ルイス・ボルヘスは「ヒギンボタム氏の災難」について,「ホーソーンは喜劇性を強調しているが,もしこの作品がいま書かれたとしたら,その結末は悲劇的なものとなるだろうし,出発点となっていたかもしれない」と語っている。

 ところで,リョサの著書を読み返していた最中,G.ガルシア=マルケスの訃報を新聞で知った。リョサとマルケスの関係についてきちんと読んでみたいと思っていたところだったので,そのタイミングに少なからずショックを受けている。 あわてて,というわけでもないけれど,出版されたばかりの「疎外と叛逆:ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話 」(水声社 2014)を注文してみた。

2014-04-14

2014年4月,君子蘭の開花

 4月になって新しい環境に身を置いています。膨大な情報を頭に取り込むのに四苦八苦中。完全に,脳の「老化」という現実に向き合っている日々です。

 疲労困憊して家に帰ってきて,今年はたくさんの花をつけた君子蘭の鉢なぞ眺めていると,心底癒されます。蘭は西洋のものも東洋のものも大好き。絵画で言えば,西洋のボタニカルアートもいいし,水墨画,とりわけ朝鮮絵画のそれに惹かれます。