2015-02-05

2015年2月,東京都内,いくつかの展覧会の覚書

 平凡な日常を過ごしているつもりでも,次々と起こる些細な出来事が心身へ投げかける波紋の連鎖というのは,なかなか馬鹿にできないものであるのだなあと,年末からこの1月にかけて実感しました。日常から逃避するように訪れたいくつかの展覧会を忘備録として。
 
 パナソニック汐留ミュージアムで「パスキン展」を見ました。「狂乱の時代を生きた旅人の軌跡」というタイトルがついた展覧会。ミュンヘン,アメリカ,キューバ,パリ。画家の人生とは旅だったのか,帰る場所はあったのか。パリ時代の版画「放蕩息子の帰還」がとりわけ心に響きます。新橋へ向かいながら空を見上げます。
 白金台へ向かって,改修工事の終わった東京都庭園美術館へ。「幻想絶佳 アール・デコと古典主義」が4月まで開催中です。本館の外見は以前の建物とほとんど変化はわかりません。宮様の優雅な生活を思い浮かべながらゆっくりと部屋を回り,増設された新館へ。
 杉本博司がアドバイザーとして参加したという新館は,アプローチの波板ガラスが面白くて,うまく撮れるだろうかとわくわくしながらカメラを向けます。建物自体は普通で,展示室も普通のホワイトキューブ。ウジェーヌ・ロベール・プゲオンの「蛇」は確かに迫力があって面白かったけれど,それを「本展のメインビジュアル」(チラシより)などと銘打つセンスがよくわからない。心身に余裕がないので,ついつい文句が多くなります。  
 
 文京区駒込の東洋文庫ミュージアムでは「もっと知りたい!イスラーム」展を見ました。時期的に,不穏な影響がなければよいなという思いは杞憂でした。静かな展示室で貴重な文書や史料をじっくり眺める。特別公開の文庫名品コーナーの「朝鮮風俗図巻」の鮮やかな人物像に惹かれる。オリエント・カフェへ向かう回廊の壁には様々なアジアの文字が刻まれていて,その見慣れない文字の躍る姿は眺めるだけでも楽しい。