2020-06-28

読んだ本,「水死人の帰還」(小野正嗣)

 小野正嗣の「水死人の帰還」(文藝春秋 2015)を読了。タイトルから,ガルシア=マルケスの「この世で一番美しい水死者」に通じるものがあるのかと期待して読み始めたのだが,異質な世界だった。
  九州の田舎の漁村である「浦」が舞台となり,そこに住む伽とオジイとオバアが描かれる。閉鎖的な浦の風景の中に沈む,オジイとオバアのつながりは,一見美しいのかと思いきや,そんな読者の浅はかな読みを嘲笑うかのように陰惨でグロテスクだ。
 
 読み進めるうちに,オジイとオバアの生死さえ曖昧なものになっていき,「水死人」とは誰(何)なのか,「帰還」とはどこからどこへなのか,何を象徴しているのか,象徴しようとなどしていないのか,混乱するばかり。

 ようやく読み終えて,翻訳の仕事とはまったく異質なその小説世界に呆然となる。しかし,私はまたこの作家を読むだろうな,という不可思議な確信めいたものを,他者のまなざしのように冷ややかに見つめている自分がいる。

2020-06-24

古いもの,フェルメールで買ったもの,イギリスのスリップウェア

  移動も解禁になって,金沢へ行ってきました。1年ぶりです。座席は開けて販売されてたはずなのに,羽田からの航空機は満席。3列並びの思いっきり真ん中に座って,不安な気分に。。

 1年ぶりにのぞいたフェルメールで,素敵なスリップウェアを手に入れました。フェルメールでこういう感じはちょっと珍しいかも。バーナードリーチの弟子の流れをくむWinchcombe Potteryという窯のCharles Tustin作のもの。調べてみたら,兄のSidney Tustinと兄弟で作陶していた作家で,1930~1950年代のもの(結構,幅がある)らしい。

 民藝の器は好きだけど,イギリスのスリップウェアが我が家にやってくるとは思わなかった!とってもうれしい。

2020-06-15

2020年6月,イツァーク・パールマンのバッハ

 クラシック音楽は門外漢なのですが,先日FMから流れてきたバッハのパルティータの響きがあまりに美しくて,プレイリストを調べて同じCDを注文してみました。なかなか届かないなあと思っていたら,ドイツからの航空便がポストに入っていて,そういうことに感激してしまう今日この頃。


2020-06-08

2020年6月,ナゴランの開花


 ちょっと立て込んでしまって,なかなか読書も進まない日々。ナゴランが開花しました。何年ぶりだろう,というくらい。ほんとに自然に癒されてます。多和田葉子の新作「星に仄めかされて」が届いていて,楽しみ。