2017-02-19

2017年2月,金沢(2),石川県立歴史博物館

 
 雪の金沢で生と死,老と病を考える日々を過ごしました。忘備録として。金沢神社で神頼み。足元を撮る。
 
 石川県立歴史博物館は赤レンガの建物。かつて陸軍兵器庫,戦後は金沢美術工芸大学として使用されていた建物だという。兵器を収めていた建物に,美を追求する若者が学び,そこが歴史を語るミュージアムへと変遷したということ。内部はいかにも,な感じにリニューアルされていて,快適な空間です。
 
 「村松コレクションの書と絵画」展と「れきはくコレクション」展を見る。韓国全州博物館と姉妹館協定を結んでいるらしく,コーナーを楽しみにしていたら,韓国考古関連の書籍・図録が並んでいるだけでした。
 
 ほかに前田土佐守家資料館で「前田土佐守家の奥方」展。

2017年2月,金沢(1),トーマス・ルフ展

 昨秋,東京国立近代美術館で開催されていたトーマス・ルフ展を見逃してしまったのですが,金沢21世紀美術館で巡回展を見ることができました。この美術館は,現代美術を愛する観客というより,金沢の観光の目玉として訪れる観光客が多すぎます。今展も,ガイドブック片手,みたいなグループやカップルがたくさんいて,ちょっと(かなり)テンションが下がる下がる。
 
 そもそも,現代美術を楽しむという行為にはどこかポピュラリティーからは距離を置いた,醒めた自意識みたいのが土台にあると私は思っていて,それはある種の特権的な楽しみと言ってしまってもいいのではないかと思うのです。だからこそ,この美術館の人混みにはちょっと辟易する。
 とまあ,グチはこれくらいにして,さてThomas Ruff。何と言っても巨大なポートレートが圧巻。そもそも証明写真とは,自らのidentityをある特定の機関に提出するための手段といえるでしょう。それを文字通り「公衆の面前に晒す」ということ自体にざわざわとしたものを覚えるわけですが,ここにあるのはとにかく巨大なサイズに引き伸ばされていて,それ自体が不可思議な映像なのです。この証明写真の「意味」は存在するのだろうか。
 
 そしてもっと不思議な感覚を覚えたのがother Portraits「アザー・ポートレート」の展示でした。複数のポートレートをモンタージュの手法でプリントしたもの。モンタージュとは,言うまでもなく実在の犯罪者の顔を作り出すもの。作り出された顔は実在の犯罪者に似せた「非在の顔」でしかない。しかし,それを作り出すために重ねるのは「実在の顔」。
 1枚1枚を見ていて,奇妙なことに気付きました。写真のフレームに,ガラス(アクリル板?)が入っているものとそうでないものがあるのです。必然的に,見ている自分の顔が映り込むものとそうでないものがある。これは意図された演出なのだろうか?ガラス入りのフレームの前に立つと,私の顔が重なるのです。あわてて別の1枚の前に立つと,今度はその顔が自分とそっくりなことに気付く。
 
 美術館の外は吹雪になっていて,まだ夕刻には早い時間なのに,暗く重い空が低い位置まで迫っていました。きっと,東京国立近代美術館で見るのとはまったく違うThomas Ruffを私は体験したのだろうな,と思いつつ,降りしきる雪の中へ足を踏み出しました。

2017-02-05

2017年1月,福岡(3),九州国立博物館「宗像・沖ノ島と大和朝廷」展


 
 初めての九州国立博物館。いちいち感動しっぱなしでした。太宰府天満宮からのトンネルがかっこいい!トンネルをぬけて目に入る巨大なガラスがかっこいい!
 
 「宗像・沖ノ島と大和朝廷」展は神宿る島の神宝だけでなく,大和・筑紫そして韓国の出土品も展示されて,大興奮。韓国国立中央博物館や韓国慶州博物館からの金製指輪の展示も見事なものでした。
 
 慶州博物館もぜひ行ってみたい博物館の一つです。ユーラシアの文物の出土品が多いはず。
 
 常設展の4階文化交流展示室もすばらしい展示。時代ごとにテーマが設定され,「アジアの海は日々これ交易」という第6~7室には思わず釘づけに。うっとりのガンダーラ仏,アジアの面,遣唐使船の復元などなど。
 
 これは1階エントランスのインドネシアの楽器。あじっぱという楽しい広場もあります。ミュージアムショップでは香炭や,勾玉キットなどを購入。過去の図録も充実してます。残念ながら探していたベトナム展の図録はsold outでした。ああ,また行きたい。


2017年1月,福岡(2),宗像大社・神宝館

 福岡への旅は太宰府に向かう前にまず,空港から博多駅で在来線に乗り換えて宗像へ直行し,宗像大社に行ってきました。写真はご神木です。今回の旅は九州国立博物館で開催中の「沖ノ島展」を見るのが目的なので,そこでご神宝の優品を見ることができるのですが,やはり神宝館へは一度行ってみたい。
  そもそもは出光美術館で見た宗像大社展(2014)で沖ノ島発掘の金製の指輪に魂を奪われた!のがすべての始まり。韓国国立中央博物館で新羅の類品に大感動して,今回はぜひまた沖ノ島の指輪に再会するのだ!
 
 九博の展示リストを見ると件の指輪は後期の展示なので,ちょうど私が行ったときはまだ宗像に展示されてました。大社は観光バスがたくさん乗り付けて賑わっていましたが,神宝館はそれほどでもなく,じっくりと楽しみました。銅鏡も文様が美しく,この神宿る島の神秘と,この島を祀る海の民にすっかり魅了されています。
 
 藤原新也撮影の写真の展示も迫力がありました。「神の島 沖ノ島」 (小学館,2013)という写真集が出ているようです。