2021-06-29

読んだ本,「植物忌」(星野智幸)

 星野智幸の「植物忌」(朝日新聞出版社 2021)を読了。朝日新聞に掲載された書評がとても面白かったので読んでみた(それはそうか,という気もする)。星野智幸は随分前から気になってはいるのだけれど,何となく読まず嫌いで今まできてしまった。島田雅彦と近い頃があったようでもあるし,飯田橋文学会と近そうでそうでもなさそうで,私にとっては何か不可思議な気配をまとう作家という印象がある。

 「植物忌」は植物と人間の境界線が曖昧な世界のさらに先をいく(上記書評より),植物に変身した人間たちの物語。冒頭の「避暑する木」(書き下ろし)は不穏な展開だけれども,明るいユーモアが通底していて,あれ,楽しいじゃないの,と思いながら読む。

 しかし,「記憶する密林」,「スキン・プランツ」…と読み進めるうちにその不穏な世界に徐々に飲み込まれ,植物転換手術を受ける「ぜんまいどおし」に至っては,あまりに爽やかにグロテスクな世界を描き出す筆致にぞっとしてしまう。

 もう無理,と思いながら結局最後まで読み通してしまった。最後の「喋らん」を読みながら,私は我が偏愛する蘭の鉢植えたちを横目で確認しながら,「あなたたちはこんならんとは違うわよね」と話しかけてしまった。返事を待っていた。私の指の先は緑色になっていた。

2021-06-18

2021年6月,横浜,「未練の幽霊と怪物 『挫波』『敦賀』」


  久しぶりに舞台を見に行く。2020年の舞台が中止になってがっかりしていた「未練の幽霊と怪物 『挫波』『敦賀』」。チケットが取れてよかった。KAATの中スタジオの5列目ほぼ中央は絶好の位置だった。

 作・演出の岡田利規は2013年頃から能へと接近しているのだという。本作は「能と現代演劇の橋掛かり」だと指摘する劇評が朝日新聞(6/17夕)に掲載されている。そんな予備知識は皆無で、ただ森山未來の身体表現を見たいというそれだけの理由ででかけたのだった。

 『挫波』は森山未來がシテのザハ・ハディドを演じる。幻の国立競技場の無念,成仏できない建築家。夢幻能の形式そのままに,あの世から呼び戻された後シテのザハの魂が森山未來の身体を借りて舞う。鼓笛と謡のドラマチックな演奏に合わせて舞う。

 息を詰めてその舞を見ていると胸が締め付けられるようだった。幻のスタジアムを忘却していく私(たち)への呪詛なのか。それとも,そういう演劇としての意図とは別の次元で森山未來の身体の放つ強烈なエネルギーに圧倒されたのか。終演後,椅子から立ち上がるのがやっとだった。

 
 

2021-06-04

2021年6月,デレナッティの開花


  いつの間にか6月に。今年もベトナム原産のパフィオ,デレナッティが開花しました。可愛い姿に癒されます。すべての人に健やかで幸せな日々が戻りますように。