2016-06-19

2016年6月,東京白金台,「メディチ家の至宝 ルネサンスのジュエリーと名画」展

 足の外傷で歩くのがやっとという日が数日続いてしまいました。周りに迷惑をかけるわけにもいかないから,という無理もたたってなかなか完治せず,「移動」という当たり前の行為の有難さを痛感。何より,身体のダメージは精神的にも参ります。

 ようやく完治して,トンネルを抜けた気分です。たまっていたもろもろの雑事を片づけて,目黒方面へGo! まずは東京都庭園美術館で「メディチ家の至宝 ルネサンスのジュエリーと名画」展を。建物脇の塀のレリーフから庭園を透かし見る。
  今どき,「名画展」というものベタなネーミングだなあと思いつつ,会場へ足を踏み入れるとびっくりするほど混雑しています。東京都の高齢者無料デーだったらしい。静かな午後にゆっくり見たかったなあ,というのがホンネかも。

 メディチ家の家系図など目で追いながら,ずっと思い出していたのは辻邦生の「春の戴冠」。かなり前に読んだので,細部はほとんど思い出せない。ストーリーよりも,本そのものを手に入れるために,あちこちの古本屋で探したことの方が鮮明な思い出として甦ります。

 ネットであっという間に目当ての古書が手に入る今となっては,あの日々は何だったのだろうという思いと,宝探しみたいで楽しかったなあという思いとが交錯する。7月に,学習院大学史料館で「春の戴冠」に関する展示があるというので,楽しみ。

 肝心の「ジュエリーと名画」は,人の頭越しであまり集中できなかったのですが,ブロンツィーノのマリア・デ・メディチの端正な肖像画がいつまでも残像として残ります。10歳くらいのときの姿だそう。宝飾品で飾られた少女の深い眼差しからは,未来への希望や生きる歓びを感じ取ることは難しい。その灰色の瞳もまた,無機質な輝きを湛えているように見えてしまうのです。

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