2020-12-20

2020年12月,東京小平,「DOOR IS AJAR 山本直彰展」(武蔵野美術大学美術館)

  武蔵野美術大学美術館へ山本直彰展を見に行く。武蔵野の地に広がるキャンパスには美大生らしい個性的な若者があふれ,ちょっとした異世界のよう。

 展覧会のタイトルは"DOOR IS AJAR"。えっ,"ASK,SEEK, KNOCK"の次についにドアが開いたの?と驚いたが,日本語が添えられている。「ドアは開いている か」。問われているのだ。観る者としてドアに対峙する私たちに。

 1998年頃に初めてこの作家の存在を知り,閉ざされたDOORに惹かれ続けてきた。身体の芯から溢れ出る言葉もまた鋭く,今展の図録に収録されたエッセイ選を夜更けに読むと,私と世界の間のドアはバタンと閉じる。

 第2会場に展示された新作「我々はどこからこないで 我々はどこへいかないのか」を前にして,人をくったようなタイトルにめんくらいながらその意味を考える。2011年にインタビューに答えて「(生きることとは)前も後ろもないどこかへ向かっていること」と答えたという。

 私は作品の前で,右往左往しながらプラハ滞在時のドローイングやドアの写真を見て息を呑む。プラハではドアは開いて「いた」のか。いや問われているのは今,「開いている か」。

 いつまでもいつまでも考え続ける。

 冬の陽ざしが眩しい。前庭の植物たちが賑やかに迎えてくれる。

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