2012-08-27

2012年8月,金沢(2),アンティークフェルメール

 金沢に「フェルメール」というアンティークショップがあって,立ち寄るたびに心ひかれるものと一つ二つ出会います。今回はイギリスの古い木の箱を一つ,求めました。

 横12センチ,縦7センチくらいの小さいもの。切手を入れるための箱だろうということ。箱の中にはなるほど,仕切り板があって,切手をしまっておくのにちょうどよさそう。この箱の持ち主だった人は,手紙や葉書をしたためてからこの箱の前に立って,蓋を開けて,切手を取り出して,そしてそれを貼って投函したのでしょう。誰にどんな便りを?

上蓋の表面にはQui Invidet Minor Estと彫られています。調べてみるとラテン語で,He who envies another is his inferior.という意味だそう。「他人をうらやむのは卑しいことだ」くらいでしょうか。英国ケンジントンにあるEdward Corbould(1815-1905)という画家の生家の外壁にも同じ文言の意匠が施されていることがネットで判明しました(なんて便利な世の中!)が,出典などはよくわからずじまいです。

 この木箱を店主は「亜麻仁(あまに)油」で磨いてくれて,木の艶がとてもよい感じになりました。自ら英国やオランダに買い付けに行く店主は博識で,話すのがとても楽しみ。本の話題も刺激的です。何冊か薦めてもらいました。「天職の運命 スターリンの夜を生きた芸術家たち」(武藤洋二著 みすず書房),「パンとペン」(黒岩比佐子著 講談社)などなど。