2016-10-30

届いた写真集,「パリの記憶」(高田美)

  堀江敏幸の「仰向けの言葉」を読んで,どうしても欲しくなって探した写真集(京都書院,1995)が届いた。高田美は何と読むのだろう,というくらい初めて聞く写真家だった。乳母車を取り巻く修道女たちが「山高帽かクグロフの型のような黒い物体」に見えるという1枚の写真を見たかった。
  想像していた以上に,しんと美しい写真だ。とっさにジャコメッリのモノクロームが思い浮かぶ。だが,と敢えて言ってしまえば,堀江敏幸の文章を読んだ時以上の感慨はなく,頁を繰る作業はあくまで確認作業になってしまう。言葉は後からついてくる,と言った小説家の言葉が何度も頭をよぎる。

 先入観なく惹かれたのは,雨のパリを歩く「ほっつき犬」,揺れるカーテンから夜が忍び入る「夜の香り」。残念だったのは,写真のタイトルのフランス語に発見された誤植がずらっとたくさん,正誤表としてはさみこまれていたこと。写真集に正誤表はないよな,とひとりごちる。 

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