2022-04-24

2022年4月,東京上野,二科展

 上野の東京都美術館で春季二科展を見てきました。夏(本展)の新国立のものすごいボリュームに比べると,ぎゅっと濃縮された感じ。

 春季展の新しい試みという「本展受賞者の中から5名の新進作家を選び一人当たり10m分の展示スペースを与える個展様式の展示」(広報二科より)のコーナーで坪田裕香さんの「in the water」シリーズの大作5点をじっくりと。

 作家本人のお話を聞けたので,なるほどと感心することしきり。把手の部分の質感や映り込み,ガラス表面の文字の配置などなど,素人には考えの及ばない工夫と苦労があるのだなあ。と。

 水に半浸するのは竹製のまきすやホースの部品や大根の漬物とその切れ端など,「普通は」画題に選ぶかなあというものたち。じっと見ていると,このパイレックス/ボウルたちは写実のようでいて微妙に現実世界のものではないように見えてくる。

 パイレックス/ボウルの画を見つめる観客。パイレックス/ボウルを描く作家。パイレックス/ボウルとその中の水とそこに半浸する物体。それぞれの位相が一直線には結ばれていないような感覚を覚える。だから絵の中の物体はどこかこの世ではない場所に浮遊しているようだし,見ている私は足元がふらふらしてくる。
 とまあ,これはあくまで私見です。面白いのでぜひ実物を見てみてください。次はどんな「in the water」を構想してるのだろう。夏の本展が楽しみです。同時代の作家を追いかける醍醐味かと。

 ほかにも面白い作品がたくさんありました。小原禎二の「Reflectors」は浮遊するタマネギ。面白い。中澤純代の「一所懸命」は日本画風の画法と描写力の凄さに圧倒されます。(このタイトルはどうなんだろう,とは思いましたが。)
 蛇足ながら,受付でもらった「広報二科」に外部審査員選考評として建畠晢氏の寄稿が! おお,こんなところ(失礼)でアキラ氏の名前を発見するとは。と一人盛り上がり,帰宅して真っ先に「そのハミングをしも」(思潮社)を手にとったのでした。今年も「反・桜男」の季節が過ぎ去った!

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