2013-09-16

2010年12月,ベトナム追想/古いもの,青花山水文合子

  数年前にハノイを旅したときは骨董屋をのぞくのもほんとに楽しかった!手の出るものを二つばかり購入しました。これは前掲のベトナム陶磁展でもたくさん展示されていましたが,黎朝の山水文合子です。径6.5㎝くらい。

  この合子を買った店のあるホアンキエム湖北側に広がる旧市街は,入り組んだ路地に現地の人たちの日々の営みと観光客相手の洒落た雰囲気の店が入り混じります。まるで異界に迷い込んだような錯覚に陥る場所。
  ミュージアムとして保存されている旧家に足を踏み入れる。入口で安くない入場料を払って順路をたどるうちに,いつしか細長い家の奥にある厨房に迷い込んでしまう。「さあ,食事の支度よ,料理を器に盛ってちょうだい」と女主人が強い口調で言う。棚に並んだ皿を1枚手にしながら,もう二度とこの街から,いや,この家から外へ出ることはできないのだろう,とぼんやり考える。現実のような白日夢。白日夢のような現実。

 帰国後,この写真を見た年上の知人が,「こんなところで客死したいものだね」と呟きました。この人とはなんとなく波長が合うな,と感じたものでした。

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