2014-05-18

読んだ本,「疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話」(寺尾隆吉訳)

 「疎外と叛逆 ガルシア・マルケスとバルガス・ジョサの対話」(寺尾隆吉訳,水声社 2014)。亡くなったばかりのガルシア・マルケスの追悼文をあちらこちらの読書欄や書評欄で見かけるタイミングで,2014年3月に発行されたばかりのこの本を注文して読んでみた。
 親友同志だったというマルケスとジョサだが,1976年に映画の試写会という公の場で久しぶりに再会したとき,ジョサはマルケスの顔面にいきなり強烈なパンチを浴びせたのだという。訳者あとがきによれば,ラテンアメリカ文学史上,もっとも衝撃的な場面と言われているらしい。あまたの読者と同様,この本の訳者もまた「一体何があったのだろうか?」という疑問を呈示している。
 
 とはいえ,この本がその謎の単純明快な解答を指し示しているわけではない。二人の(巨人)作家の文学論や人生観を,その対話を通して垣間見ることができるだけであり,そこから読み取るには読者としての力量が求められる,そんな本だと言えそうだ。
 
 私は読み通すのにかなりのエネルギーが必要だった。そして解答はこれからずっと,二人や他のラテンアメリカ文学作家の作品を読みながら考え続けるだろうという,予感とも諦念とも言い難い感情に囚われている。
 
 「文学,とりわけ小説には一つの機能があることがわかってきました。幸か不幸か,その機能は破壊的とでも言えばいいのか,ともかく,私の知るかぎり,優れた文学が既成の価値観を称揚するようなことは皆無なのです。優れた文学は常に,既成のもの,当然として受け入れられているものを破壊し,新たな生活形態,そして新たな社会を打ち立てよう,言ってみれば,人間生活を改善しようと志向するのです」(ガルシア・マルケスの発言;pp18-19より引用)

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