2017-11-23

2017年11月,東京上野,「怖い絵」展

 展覧会を見るために何時間も待って,いざ会場に入ったら大混雑というのはもはや修行みたいなものですね。根がアマノジャクなので,「〇時間待ち」という評判の展覧会は大体パスしてしまうし,入っても後列からすすーっと流してしまうのが常なのですが,今回だけは頑張った。
 上野の森美術館で開催中の「怖い絵」展にJ. W. Waterhouseの「オデュッセウスに杯を差し出すキルケー」を見に行ってきました。展覧会自体はドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」が目玉です。ロンドンで見たはずだけど,まったく記憶にないのだからピンと来なかったということなんだろう。
 
 Waterhouseはそうはいきません!バルガス・リョサの「悪い娘の悪戯」(作品社 2011)を読んだとき,その小説世界を視覚化したようなこの絵を採用した表紙カバーにやられてしまって,いつか絶対,実物を見たいと思っていたのです。しかし。所蔵のGallery Oldhamはマンチェスターの近郊のようで,そんな遠くに行くことを考えると,上野で2~3時間行列する方がよっぽど現実的。
 
 実際は1時間弱の行列で中に入り,遂に人込みの中で見ることができました。おお,これが。画家Waterhouseのキルケーはリョサの読者にとってのニーニャ・マラであって,濃い色の眼,厚い唇。壮絶な愛の物語が蘇ってきて立ち去りがたい。
 
 Tateの「シャロットの女」の大画面を想像していたので,意外と小さいな,という印象。「漱石の美術世界」展で見た「人魚」や「シャロットの女」(リーズ美術館蔵)と並ぶと壮観だろうなあ。日本でWaterhouse展が開催される日を夢見つつ。
 
 蛇足ながら,「怖い絵」展はルドンやホガースの版画も量としては多く,「どう,怖いでしょう」と言わんばかりの展示には「はあ,何で?」と答えたくなりました。アマノジャクなので。

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