2018-11-23

2018年11月,東京日吉,「日曜日の散歩者 忘れられた台湾詩人たち」

 昨年の公開時に見に行けなかった台湾映画「日曜日の散歩者」の上映会&シンポジウムが慶應の日吉校舎で開催されたので,出かけてきた。1933年,日本統治下の台南が舞台で,日本語で新しい台湾文学を作ろうとしたモダニスム詩人たちの姿が描かれる。
 
 「風車詩社」の存在を知らなかった私にとっては,すべてが驚きの連続である。すべてが,というのは,彼らの存在・活動・作品のことであり,全編を通して登場人物の「顔」を映さない映像のことであり,まるでパッチワークのようにスクリーンに映し出される写真・アート作品の数々のことである。
 
 林永修氏の人生が中心に据えられる。ただ,詩作は字が小さくてあっという間に次の場面に転換するのでほとんど読めていない。印象に残るものは後日,参考文献に当たってみよう,という気になる。劇的な人生にばかり吸い込まれていく。
 
 個人的には,桑原甲子男や中山岩太のモノクロームの写真や古賀春江の作品が映し出されるたびに心が躍る。映画全編を通して,どこか美術館のホールでシュルレアリスムの映画を一編見たような感覚だ。 
 
 時間の都合が合わず,シンポジウムは聴講しなかった。日吉キャンパス内の来往舎では関連の写真や文献の展示があり,興味深く拝見。世界には知らないことがいっぱいあるな,という想いを抱えて初冬のキャンパスを後にした。

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