2021-09-04

読んだ本,「スーパーエンジェル」(島田雅彦)

  島田雅彦の新刊は「子どもたちとアンドロイドが創る新しいオペラ」Super Angelsの小説版とリブレットが所収された1冊(講談社 2021)。オペラの総合プロデュースと指揮は大野一士,作曲は渋谷慶一郎,そして台本が島田雅彦という顔ぶれで,8月にオペラシティで開催された公演のチケットは取れなかった。

 本書の惹句には「 全知全能のアルゴリズム=マザーに支配され,生まれながらに階級で選別されて生きる人類。異端の少年と中古アンドロイドが世界を変えるSF冒険物語」とある。少年アキラはマザーを裏切るゴーレム3の力を得て新しい次元へと踏み出す。

 「カタストロフマニア」にも通じる活劇だが,小説家の想像力とオペラの話法が絡み合って,とにかく舞台を見たかった,というのが読後の実感だ。年内に配信があるそうなので,それを楽しみに過ごすことにしよう。

 「何も知らない人はいう。/パンドラの箱を開けるなと。/災厄が世にはびこるからと。/でも蓋は開けるためにあるんだよ。/邪悪なものなど何もないよ。/おやおや,箱の底に何かある。/キノコみたいなものがある。/ほらほら,これが希望だよ。/希望はここにしかないんだよ。」(pp.66-67)

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