2022-11-13

読んだ本,「李王家の縁談」(林真理子)


 「李王家の縁談」(林真理子 文藝春秋 2021)読了。初めてのソウル旅行(2015)で宗廟を訪れたとき,李朝最後の王世子(皇太子)の李垠とその妻の方子の霊も祀られていると知り,日本の皇族から嫁いだというその女性の人生に興味を持ったのだった。

 帰国してからちょっと調べただけですっかり忘れていたが,昨年この小説の出版を知って,やり残した宿題を思い出した気分に。今頃になってようやく頁を開いた。読み始めるとその日のうちに読了。林真理子氏の文章はとても読みやすい。

 方子の母の梨本宮伊都子の日記が元になっている。明治・大正・昭和の皇族の姿がドラマか映画を見ているようだ。政治とは切り離せない縁組の行方や哀しい事件に同情を覚えそうになるが,およそ下々の世界からは想像もできないやんごとなき世界の出来事。

 読み終えてふと考える。林真理子という小説家が構成した世界と,私という読者の生きる世界を繋いだのは,宗廟でチマチョゴリ姿がかわいいガイドさんの言葉だ。ここには最後の王世子様と奥様の方子様の霊もお祀りしているのです。フィクションと現実がメビウスの輪のようにぐるぐると回る。

 小説では韓国に帰国してからの王世子夫妻と息子の人生は描かれない。巻末には多数の参考文献が記載されているので,次は歴史書で読んでみようと思う。文庫本も多い。「梨本宮伊都子妃の日記」(小田部雄次),「日韓皇室秘話ー李方子妃」(渡辺みどり)などが入手も容易そうだ。

0 件のコメント: