2012-10-13

2012年10月,大江戸線本郷三丁目駅,稲川方人の詩

 普段使わない駅を利用して,思いがけないものに出会いました。大江戸線本郷三丁目駅の改札を入った正面の壁に,日本の詩人たちの詩の一節が刻まれたパネルがあります。吉増剛造,辻井喬,松浦寿輝などなど,数十人の詩人たち。

 JDN(ジャパンデザインネット)のHPによると,「本郷三丁目駅周辺は,近代文明や学問と縁深く,文化の香り高い地域なので,過去から未来へ日本人の知性と感性を橋渡しすることが相応しい,という考えでこの半世紀の間に日本の詩人に詠まれた詩から48編の詩句を選出した」のだそう。大江戸線の駅の開業は2000年だから今から12年前のこと,東大の小林康夫教授が選考委員をとりまとめたそうです。

 地下のホームへ急ぐ足をしばし止めて眺めていたら,稲川方人の「封印」(1985)の一節を発見。人生いろいろあって(これでも),深い内省の一時期(そんなこともありました) に擦り切れるほど読んだ詩の言葉にこんなところで出会って一瞬,周りの音が聞こえなくなる。 
 
 引用されている部分を少し前から引用します。「刺激せよ,断言のいっさいのまあいを/そしてつみ重ねた抽象のいまなおの特権を/刺激せよ,刺激せよ/くるしみの過剰であり冒瀆の過剰であるさなか/詩が詩で成ることに遠のき/われわれの排除が/われわれの絶え間ない頽廃のうちでも/もっとも目に余る自由となるまで/なにものかの外でのみ生存する鳥なら鳥に/不足ないひとにぎりの事件を与えるのだ」(現代詩文庫99稲川方人(思潮社) pp61-62より引用)

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