2012-09-10

2012年9月,東京六本木(1),「具体-ニッポンの前衛18年の軌跡」展

 会期終了間際になって,国立新美術館の「具体-ニッポンの前衛18年の軌跡」展を見てきました。1954年に関西で結成され,1972年に解散した前衛美術家グループである具体美術協会の全容を紹介する東京では初めての展覧会とのこと。当時から評価の高かった海外や再評価の進んだ関西では紹介される機会が多かったそうですが,東京で初めてというのは意外な感じです。リーダーの吉原治良の展覧会(東京国立近代美術館,2006年)は記憶に新しいし,メンバーの白髪一雄や田中敦子の回顧展なども近年開催されていたはず。

 それほど新鮮な発見は期待せずに展示室に足を踏み入れると,「また具体の展覧会?」という先入観は,なんと断片的な知識だったかと思い知らされたのでした。「これまでになかったものを造り出せ」というリーダーのもと制作された熱気あふれる絵画作品やインスタレーションの再現,パフォーマンスの記録映像などが続いて,「熱き抽象」から「冷たい抽象」へと変化していった運動の全体と軌跡が丁寧な解説文に導かれて示されています。

 たくさんの作家の作品が並びますが,吉原治良の「黒地に赤い円」(1965)はやはり圧巻。印刷やデジタル画像では体感できない迫力です。展示室の外にはガラスの壁面に元永定正の「作品《水》」(再製作)が設営されています。何色もの色水が吊り下げられた様子は,窓からふりそそぐ陽の光をうけて,「カラフル」という言葉がそのまま具体的な形になったようです。