2012-09-02

2012年8月,東京渋谷,ロバート・メイプルソープflowers写真展

 夏の終わりとはいえ,まだまだ暑い日の午後,渋谷西武で開催中の「ロバート・メイプルソープflowers写真展」を見てきました。駅前のスクランブル交差点は眩暈がするような人の波。会場はデパート上階の催事場の一角ですが,端正なモノクロの空間は原色のシブヤとは別世界のようです。

 「今再びヴェールを脱ぐ『完全なる瞬間』」とチラシにあるように,メイプルソープの名前を目にするのは久しぶりな気がします。1946年生まれ,1989年に42歳でエイズで亡くなった写真家。国内では10年ぶりの写真展ということで,書棚から作品集や過去の展覧会の図録を探し出して気分も上がり,楽しみに出かけました。


 展覧会のタイトルから,写真集Flowers(Bulfinch Press, 1990)で構成された展覧会と思っていたら,2006年にThe Complete Flowers(Te Neues Pub Group, 2006)という写真集も出版されていて,今回はこの写真集のイメージで構成されていたようです。というのも,前者はすべてカラー写真で構成されていますが,後者は同じイメージでもカラー写真のものも,モノクロのものもあります。今展の写真はすべてモノクロイメージで,ずらりと並んだモノクロの花たちは息を呑む美しさです。

 ただ,カラー写真で見慣れたイメージがモノクロで続くと,少しずつ違和感を感じました。チラシには「輝かしき生と美しき死に手向けられた弔いの花たち。」とあるので,「モノクロの花」=「弔いの花」というのが主催者の意図なのかもしれません。確かに死の直前に友人たちに贈られたチューリップは「死」のイメージが強いけれど,彼のflowersを「弔いの花たち」とくくってしまうのはどうなんだろう。せめて最後のコーナーthe last worksは,生の衝動やエロスそのものを感じさせる「色」がまぶしいカラー写真の蘭や薔薇を見たかったなあ,と思いつつエスカレーターでデパートのフロアを1階ずつ,光あふれる地上へと降りていきました。