2012-09-03

古いもの,祖父の小箱,木の人形

 長生きをした祖父が亡くなってから20年以上。忙しい生活を送り,引退してからはたくさんの本に囲まれて過ごしていました。祖父が晩年暮らした実家の部屋には,ガラス入りの扉のどっしりした本棚のほかには,もう祖父の面影を思い出すものはほとんど残っていません。その本棚がとても欲しいのだけれど,私の生活のサイズにはちょっと大きすぎます。

 でもすてきだなあ,こんな本棚に大好きな本を並べたらさぞ幸せだろうなあと思いながら下段の扉を開いてみたら,いくつかの黄ばんだ紙の小箱を見つけました。わりとこまごましたものが好きだった祖父らしく,「ペンギン」と書かれた小箱には5センチほどのガラス製の2体のペンギン。毎年,干支の置物を飾っていたので「丑」とか「寅」とか書かれた箱には陶器の置物だったり,張子の寅だったり。

 とりわけ古びた箱には「雑品」と書いてあって,各地の民芸品に混ざって和紙でくるんだ15センチほどの小さな木の人形が2体入っていました。台座の裏には判読できないアルファベットと数字が鉛筆で書かれています。どう見ても日本のものではありません。微妙に大きさが違うので,もともと一対ではなさそうですが,若い娘と父親のようにも,夫婦のようにも見えます。

 祖父は若いころ,一時期ドイツに滞在していたらしいので,そのときのものかもしれません。遠い異郷の地の自室にこの人形を飾って,何を想ったのでしょう。そしてこの人形たちは今,はるか東の国で何を想っていることでしょう。