2022-02-13

2022年1月,松本(1),石川直樹 8848/8611


 松本駅から徒歩で石川直樹の写真展「8848/8611」の会場へ向かいます。信毎メディアガーデンのホールというのは,アートの展示会場というわけではなく,カーテンというか黒幕で仕切った正方形に近いホールの一角。天井から吊るされた写真が隙間なく並んでいて,観客は通路を辿るように見ていくのですが,写真の支持体の色でエベレストかK2かわかるようになっている。…なんだか,かっこいいんだかお手軽なんだかよくわからない展示だった。

 入場料はしっかり取るので,オペラシティの個展とまでは言わないまでも,ちゃんとした写真展かと思っていたのでちょっと肩すかしだったな。写真は期待通りでしたが。

 いかにもというエベレストやK2の姿も,石川直樹という稀有な人の目を通した美そのものとしてそこにあるのだ,と思えてきます。オペラシティで展示されていた彼の蔵書のル・クレジオに挟まれていた無数の付箋が映像として鮮明に蘇ってくる,そんな不思議な体験をしました。

 古書市で買った2011年のユリイカ石川直樹特集号。彼の写真と冒険に関する様々な言質をすべて読み込むのは難しいけれど,倉石信乃氏の「時と形 石川直樹の『CORONA』」から特に印象に残った一節を。石川直樹への関心の在処として,「一つは,この写真家が個々の旅において必ず「死」の接線に触れてから帰還しており,その誘引力に対する複合的な感情を,写真イメージのマージンにいわば「稀薄な剰余」として抱え込んでいると思えることだ。」(p.103)

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